当団体の活動理念でもある『どんな重度の障害があっても、地域で当たり前に過ごせる社会作り』を基に、障害のある人とバスに乗るという具体的な体験を通 して、何が課題となっているのかを参加者と共に考えていきたいと思い企画いたしました。また、「障害があってもできる!」「またやりたい!」という思いを 引き出せるようエンパワメント支援も兼ねています。
今年は交通バリアフリー法が施行されて10年を迎える年でもあり、この法律がなぜ必要だと言われてきたのか、施行されてから何が変わってきた のかを振り返る時期でもあります。そのため、今回のイベントでは、以前より良くなった点の再確認を行うとともに、もっと利用しやすくするにはどうすれば良いのかという点を報告することで、交通アクセスの面でも暮らしやすい街づくりにつながればと思っています。
ワークショップ1回目(5/7)は講師としてお呼びした今福義明さん(DPI日本会議常任委員交通アクセス担当)に『なぜ、バスや電車が必要な のか?』『バスや電車に関する法律ってあるのか?』という疑問を解決してもらうべく、今福さん自身の経験談や交通バリアフリー法の紹介をして頂きました。
今福さんのお話の中で印象に残ったのは、十数年前、初めてノンステップバスが利用できるようになった頃のお話でした。電動車いすで移動した方が早くつく 場所でも、時間をかけてバスに乗って移動していたそうです。3年かけて、バスに1000回乗り、1000回達成の時には自らバス会社に感謝状を贈ったそう です。その頃から、バス停にぴったりバスを横付けする運転手さんが現れ始めたそうです。そうなると、バスのスロープを出さなくても電動車いすで楽に乗り降りできるようになったというものでした。最初はお互いに大変なことでも、何度も繰り返すことでより良い関係になっていくというお話がとても勉強になりました。
ワークショップ2回目(5/28)は、参加者が9グループに分かれ実際にバスに乗って外出をしました。乗車したバス、行き先、参加者の感想は別 途資料をご覧頂けると幸いです。この日はお天気が悪く大変なこともあったようですが、各グループ共に大変充実した1日だったそうです。
ワークショップ3回目(6/4)は、5/28のバス乗車体験の報告をグループ毎にしていきました。バスに乗って良かったこと・大変だったこと、改めて気付いたことなど、皆さんそれぞれが充実した体験だったようでした。報告や感想を言い合った後は、バス体験の時に撮った写真を模造紙に貼り、コメントを記入して"バス体験レポート"を作成しました。各グループの個性が出ていてとても素敵な作品になりました。
この日の午後はワークショップの講師もして頂いた今福さんの一般市民を対象とした講演会を行いました。
まず、"交通バリアフリー法"の歴史や内容、達成度について、"交通バリアフリー新法"が目指していることのお話がありました。
その後、5/28のバス体験時のことを紹介しつつ、具体的に何が問題となっているのか?どのように解決していけば良いのか?というお話がありました。やはり、気付いた人が気付いた時に伝えていくことが一番大事だということ。「些細なことかも…」と思うような内容も、すごく困っている人がいるかも しれないということ。あとは継続していくことの大切さも教わりました。
最後に『なぜ、バリアフリーが必要なのか!?』ということで、都内での事例を紹介して頂きました。その方は車イス利用者で、以前は何の問題も なくバスに乗車できていました。しかし、車イスが新しくなりストレッチャー型になったことでバスに乗れなくなったそうです。実際に試してみると、問題もなく乗車でき、固定までしっかりできるのに…"一般的な車イスでない!"という理由で乗車を断られ続けているそうです。
最後になりましたが、バス体験時につくバス、関東鉄道バスの関係者の皆さま、および、その他様々な場面でお世話になった皆さま、ご協力ありがとうございました。今回、参加者それぞれが問題もなく、安心して外出できたことで『次はどこへ行こう?何をしよう?』というように自信がついた方もいます。
今後も、障害の有無にかかわらず、みんなに優しい交通アクセスになるよう、継続して活動をしていきたいと思っております。ご協力よろしくお願いいたします。
つくば自立生活センター ほにゃら 代表 川島映利奈
※本事業はつくば市社会福祉協議会より「皆川重兵衛福祉基金活用事業」の助成金を受けて実施しました。